「あきなちゃんのお弁当」を教訓にして、弱いものに寄り添える先生になれるようにしていくと決心した。

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輪橋山徒然話 2024-9-19.  「花のお弁当」

◆遠足の日の朝の教室は格別だ。

どの子も生きいきとしている。
有難い。
欠席はいないかな。
私は、それを確かめながら教室を見渡した。

あれっ、私は彼女の姿を見つけた瞬間、「しまった。大丈夫かな」
ちょっと心が揺れた。前日に声をかけるのを忘れていたのだ。

◆彼女の名前は「あきなちゃん」。

あきなちゃんがお母さんを失ったのは丁度1年前の今頃だ。
交通事故だった。
それ以来、父親は仕事を変え、日々の生活を支えるために忙しくしている。
そんな中で、時には小さなお母さんになり、彼女はひたむきに毎日の生活を送っていた。

◆その日も彼女はいつも通りの静かな笑顔で学校に来ていた。

◆お昼時、頂上からの景色を背景に、子どもたちは各々それぞれのお弁当を広げていた。
お弁当タイムはシャッターチャンスも多い。
私は、カメラを抱えて子どもたちの方に向かった。

遠くから一つの鮮やかな色彩に目を奪われた。
何かが、ほかの子どもたちとは違う輝きだ。

◆近づいてみると、それはあきなちゃんのお弁当だった。
よく見るとお弁当箱の中に、びっしりと並んだ色とりどりに敷き詰められた花々。
それは、どう見てもおそらく仏壇に供えられていたであろう花だった。

◆シャッターを向けると彼女の顔には笑顔が浮かだが、その裏には、言葉にできない寂しさが隠れていた。
彼女のお弁当には、おかずはほとんどなかった。
卵焼きは少し焦げ、梅干しも一つだけ。
きっと自分でつくった弁当なのだろう。
中身を隠すように並べられた花々が、
彼女の想いを静かに語っているようだった。

◆私は、恥じた。

その場で何も言えなかった。
抱きしめたい衝動も抑えた。
彼女の心に寄り添いたいと思いながら、
ただ見つめることしかできなかったのだ。

◆その日、私は家に帰り、大声で泣いた。

教師として、彼女の境遇を理解しているつもりだったが、
それは、実際には表面的な理解に過ぎなかったことが悔しくてならなかった。
彼女がどれほどの寂しさを抱えて、あの弁当を持ってきたのか。

◆それを考えると、涙は止まらなかった。

私は、泣きながら、弱いものに寄り添える先生になれるように、「あきなちゃんのお弁当」を教訓にして、私の教師として、人間としての未熟さを噛み締めることに決めた。

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