輪橋山徒然話 2023/10/27「よい加減といい加減」
◆「よい加減」と「いい加減」。似ているようで違う。
◆「よい加減」は褒め言葉であるが、「いい加減」は「手を抜く」「不真面目」というマイナスのイメージある。
◆そもそも加減とはどんな意味があるのだろう。
◆小学校の理科では「上皿てんびん」を使う。たとえば、5グラムの食塩を計り取りたい時には、片方の皿に5グラムの重さの分銅をのせる。反対の皿に、食塩を加えたり、減らしたりしながら、てんびんを釣りあわせる。この加えたり、減らしたりして、調整することが加減だ。小さなさじを使っての調整は、なかなか難しく、まさに試行錯誤が始まる。
◆最近はお風呂の温度は自動だが、子どもの頃は薪を焚(く)べての風呂だったので、熱い時には水を足して「よい(いい)湯加減」に調整した。
◆「加減」とは、足したり引いたりしながら「よい加減」に近づけていくことなのだ。
◆「よい加減」は「手を抜かず一生懸命」、「不真面目ではなく真面目」という「いい加減」と反対の意味になるのかというとそうではなく、それよりも「よい加減」は「加減の仕方」が丁度よ(い)いとか適当であるという意味になるのだ。「いい加減」とは、この加減ができないということだ。5グラムの食塩が、3グラムだったり、7グラムだったりするのだ。
◆「よい加減」とは、天秤を釣り合わせるバランス感覚のことを言う。つまり調節すべき相手がいるということだ。
◆例えば「よい加減」が失われたときに人は対立し、争うことになる。時には戦争が起こったりするのだ。
◆さて、「湯加減」のように加減で終わる言葉を探してみた。
味加減 匙加減 お加減 力加減 塩加減 手加減 煮え加減 火加減 水加減
◆加減とは「第六感」まで含めての「感覚」を使って調整するアナログ感がある。ひよっとして何もかも全自動化により、「加減する能力」が人間から失われているかもしれないと思った。つまり調整力の欠如だ。
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