輪橋山徒然話 2023-12-15
「動中静」と「静中動」を保つ深呼吸に加え「エポケー」という術について
◆「動中静(どうちゅうのじょう)」と「静中動(せいちゅうのどう)」と二つの言葉がある。
◆「動中静」とは騒がしい毎日の中あっでも、周りの喧騒に巻き込まれることなく、心に静けさを保つ事である。「静中動」はじっとしている時にも、常に周りの状況を把握し、最善の反応ができるようにする事を意味している。武道や能の世界で大事にしている言葉でもある。
◆どちらも「常に冷静な心を保つ」事を説いている。
◆「常に冷静な心を保つ」心を落ち着かせる方法としては、まずはゆっくりと深呼吸をあるいは、目から入る情報を遮断するとよいともいう。
◆今日ここに一つ加えたいのが「エポケー」という術だ。この「エポケー」はオーストリア出身の哲学者で、「イデーン」の作者であるフッサールの言葉なのだが、現象的還元という考え方でその意味は「判断中止」だ。結論を保留し、ひとまずそこに置いておくのだ。
◆物事を判断するのはそう単純ではない。入り組んだ事情のこともあろうし、相手もあるいは自分も感情的になっている場合もあろう。感情のもつれの原因は、見たまま、聞いたままの話をそのまま受け、返しているからだ。これを「自然的態度」というのだが、どうしても全体の一部しか見ていない危険性がある。
◆実は一部の情報で「即」判断した場合、後々後悔につながる「感情的な判断」ということになる。
◆フッサールはいう「対象を括弧に入れ一旦エポケーせよ」と。この自然態度的な判断ではなく、全て自分の中に取り入れて判断せよというとだ。フッサールがすすめる具体的な術は「文字化」である。今、目の前で「判断」を待つ事象について書き出していくのである。それは、自然態度的な判断から熟考への道なのである。
◆「動中静」も「静中動」も保てない、何か心を惑わす、心を波立たせるそんな時は、変に追い詰められることがないように「括弧に入れてエポケー」だ。一旦持ち帰り、場所をかえて、冷静に文字化しているときの呼吸は、ゆっくりとした深い呼吸になっているはずだ。それが、「動中」の「静」を取り戻す「術」という証拠でもある。
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