「100万回生きたねこ」の佐野洋子さんが「死ぬとわかるのは 自由の獲得と同じだと思う」と言う理由。

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輪橋山徒然話 2023/10/10 「自由の獲得」

雷のよく鳴る日 午後一時半ごろ
太陽を背にしていた私の正面の空に「虹」があった

それは北の空
低空の虹だ。
ちょうど向かいの家の屋根の高さだ
東から西に向かって
弧を描かず、真っ直ぐに近い。

最短距離で浄土に向かう橋にみえた。

◆寂聴さんは、「いつ死ぬのかを知ることはできません。だからこそ、「今日」という二度と来ない一日はかけがえのない貴重な時間なのです」と常々お説きになっていた。

◆童話作家の佐野洋子さんも(1936-2010)に次の言葉を書き残している。(「ヨーコさんの言葉わけわからん」より)

死ぬとわかるのは、
自由の獲得と
同じだと思う。

◆佐野洋子さんは「100万回生きたねこ」というお話の作者だ。

◆王様、船乗り、手品師と猫が生まれ変わるたびに飼い主が代わる猫。そして、その度に、不運に巻き込まれて、死んでしまう。そして、飼い主は大きな悲しみに打ちひしがれる。

◆しかし、トラ猫は、悲しまない。どの飼い主のことも大嫌いだったから。そして、なによりトラ猫は、立派なトラ模様の「自分のこと」が大好きなのだ。生きて、死んで、また生きて死んでしまうことを繰り返すこと「100万回」。

◆このトラ猫が最後に生まれ変わったのは、「自分が自分の飼い主」。孤独な「野良猫」に生まれ変わったのだ。そして、自分に見向きもしない白猫が好きになり、やがて家族になる。

◆「ところが である」。トラ猫はその白猫が死んだ時に初めて死に涙するのだ。「なぜ生きるのか」「大切なものは何か」「死とは」を知るトラ猫。佐野洋子さんの傑作だ。

◆佐野洋子さんの実は先ほどの「死ぬとわかるのは 自由の獲得と同じだと思う」の言葉の前には、

「余命二年と言われたら十数年私を苦しめてきたうつ病が消えた。
人間は神秘だ。
人生が急に充実してきた。
毎日がとても楽しくて仕方ない。」

とある。

◆佐野さんは、自分の死を宣告され、死を目の当たりにした時に、自分の持っている時間、残された時の愛おしさの前に、苦しめられてきた鬱が消えたということだ。内向きの十数年、病から解放されたというのだ。余命を知ることで佐野さんはまさに自由の獲得したことに気がついたというのだ。

◆寂聴さんの「いつ死ぬのかを知ることはできません。だからこそ、今日という二度と来ない一日はかけがえのない貴重な時間なのです」の意味するところも同じだ。そう「死」を知り、見極めることでの「自由の獲得」なのだ。

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