チンパンジーは絶望しない。人間は想像するからこそ絶望し、だからこそ希望を持つ

chimpanzeeことば
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「チンパンジーvs人間」

チンパンジーと人間の違いは何?

◆「チンパンジーと人間」は、ほとんど同じと聞いてあきれた。そんなはずはないでしょうと。

 

遺伝子レベルでは?

◆「じゃあ、遺伝子はどれぐらい同じだと思う?」と聞かれ、私は、「80%」と答えた。すると、「そんなものではない」と彼女は言った。実は、人間とチンパンジーは、98.77%は同じ遺伝子なのだと。

◆「えっ」私は、思わず「あなたの98.77%はチンパンジー」と言われたような気がした。だって100ピースのジグゾーパズル1枚しか違わないということであり、1000ピースでも12枚の違いなのだ。「1.23%」の違いとはそういうことである。

◆しかし、人間と同じ祖先を持ち、500万年くらい前に人間と別れ、別々に進化したのがチンパンジーだと考えれば少しは納得がいく。そして、このチンパンジーとの「1.23%」の違いが、人間の人間たる所以なのだという。

チンパンジーの「アイ」「アユム」親子

 ◆改めて、チンパンジーと人間の違いは何だろう。身体能力はもちろん違う。そして、もう一つは脳の働きにありそうだ。

◆この分野の第一人者は松沢哲郎先生だ。著書にはよく「アイ」「アユム」という名前のチンパンジー親子が登場する。このチンパンジーの親子の能力は、私の想像をはるかに超えていた。

◆まずこの2匹は、「アイ」が母親で、「アユム」が息子の親子である。母親の「アイ」の能力は、コンピューター画面を使って数字や文字を覚えることができる。 例えば こんなことだ。コンピューター画面にある1から9までの数字を、「アイ」は小さい順に指で触れていくことができるのだ。実際に映像でみた。すごかった。

◆4歳まで何も教えられなかった息子の「アユム」は、母親のそばで、その様子を見ていたのだろう。4歳の時に母親と同じコンピューターを与えられると、みるみる数字を学習して、半年で1から9まで数字の順番がわかるようになったという。注目したいのは、4歳ということ。これは、人間で言えば小学校1年にあたること。もう一つは、母親の学習を見て学習していたことだ。「アイ」「アユム」動画

人間より優れている?

◆さらに「アユム」たちは、人間よりもずっと優れた「記憶力」を持っていたのだ。これは「マスキング課題」によって判明した。

◆「マスキング課題」とは、1~9のなかからランダムに選びだされた数字が,タッチパネルの画面に現れ、一番小さい数字を押すと他の数字が白い四角形に変わってしまう。つまり,他の数字とそれぞれの位置を記憶できているかというテストだ。数字を小さい順に正しく押すことができれば正解なのだが,チンパンジーの子どもは画面に示された数字を一瞬で記憶できるのだ。直観像記憶というのだそうだ。

◆この実験のときに「アユム」がスタートの数字に触れるまで0.7秒。ほぼ画面に数字が映った瞬間に全ての数字と位置を覚えることができたのだ。しかも、このマスキング課題は他の子どものチンパンジーもクリアするそうだ。しかし、大人のチンパンジーではこの能力は低下していたという。加齢だ。また、記憶する時間だが、人間の小学生も大学生も大人も全く相手にならない速さだ。

瞬間的な記憶

◆松沢哲郎先生によれば、野生の暮らしの中でこうした瞬間的な記憶が役に立っているという。群れで生活する中で、仲間同士の争いも頻繁にある。また他の群れと出会った時、瞬時に相手の数や位置を把握し、戦いに備えるのに必要な能力なのだそうだ。

「知性のトレードオフ仮説」

◆松沢哲郎先生は、人間にも、もともとはこの能力があったが、「何かを得るために」捨て去ったという。これを「知性のトレードオフ仮説」というのだそうだ。

 

直観像記憶

◆人間と共通の祖先を持っているチンパンジーは、直観像記憶に優れているというのが昨日の大発見だった。この記憶力については、全く人間はかなわない。その様子については、YouTube The Cognitive Tradeoff Hypothesis(これを貼り付けて検索▶︎ゴリラの表紙▶︎犬山市の映像からスタート)に詳しい。とにかくすごい。

なぜ、チンパンジー「直観像記憶」とは

◆さて、今日のテーマは「知性のトレードオフ仮説」だ。なぜ、チンパンジーと人間に別れ、能力も違うのかということだ。

◆世界的な霊長類学者である松沢哲郎先生は、「チンパンジーに記憶力が劣るのは人間が話せるからだ」と強調する。

◆なぜ、人間にだけ「言語」があり、他の動物、特にチンパンジーには言語が発達しなかったのだろうか。その答えは、人間とチンパンジーの共通の祖先がサバンナで生活していた時に遡らなければならない。その時代のサバンナは捕食者にあふれていた。だから私たちとチンパンジーの祖先にとって生活できる場所は、森の木の上だけだ。

◆力の強かったチンパンジーは木の上に残り、木の上で生き抜くために進化した。その一つの能力が「直観像記憶」だ。

人類と言語

◆そして、その木の上から、追い落とされたのが人間である。森から追い払われ、人間はサバンナで生き残るために、集団での役割を決め、戦略を工夫して闘う必要があったのだ。集団で闘うための進化だ。初めは記号のようなもの、のちに言語が生まれた。

◆今、現代社会においても、細部まで記憶する「直観像記憶」が失われていても困ることなどない。なぜなら人間は、言語によって、より詳しく説明することができるからだ。

トレードオフの意味

◆トレードオフの意味は、「一方を尊重すればもう一方が成り立たない状態のこと」だ。つまり、「知性のトレードオフ仮説」とは、人間が「直観像記憶」捨てることで「言語能力」を進化させたという仮説だ。

◆新しいことに「脳」を使えば何かの機能を失うのだ。その理由を松沢哲郎先生は、記憶を司る脳の部位と言語を司る部位が似た場所にあるからだという。つまり、片方が進化すると片方は萎むのだ。

◆何かを得るには、何かを失わなければならないのだ。進化とは、新しい能力がどんどん発達していくだけではなく、何かを切り離しているのだ。人間は、恐竜のように巨大化して弱肉強食を勝ち抜いたのではなく、言語能力を選択し、集団で生きることを選択したのだ。

◆現人類以前のネアンデルタール人は、少人数の集団で生きていたという。彼らは身体能力も高く、強く、優秀だったが滅びている。狩りの仕方が全く違ったらしい、集団ではなく、個の戦いだったという。結局、彼らは生きるための言語も社会も形成せずに滅びていった。

◆人間の人間たる進化は、生き抜くための共同体とそれを助ける言語能力なのだ。そして、それはまだ起こっていないことを想像する力だと松沢哲郎先生。三鷹のジブリ美術館に立つロボット兵が何を伝えたいのか考える力でもあるのだ。

次の言葉から始めよう。

「人間は想像するからこそ、絶望をする。だからこそ希望を持つことができる。しかし絶望のないところには希望も生まれない。そのような、大切なことをチンパンジーは教えてくれているのではないか。」松沢哲郎先生の言葉だ。

絶望しないチンパンジー

◆そして、チンパンジーは「絶望」しないという。
◆「絶望」とは、「希望がすべて消えてしまった状態」をいう。これからの将来、未来、明日に一つも期待が持てなくなることだ。
◆チンパンジーは、自然界で生き延びるためだけに、今を生きる。そのために直観像記憶という能力を進化させた。この能力により、今ここにあるものを鋭く見極め、瞬時に判断し行動する。だから、チンパンジーには、今、目に見えない過去への後悔も未、来への絶望もないのだ。

想像する人間


◆反対に、人間はサバンナで生き抜くために、「目の前にないもの」「今ここで起きていないこと」を想像し、組み立てて思考する能力を言語とともに進化させた。思考する材料は、あらゆる物事の意味や背景や関係性のような、実際には目に見えない情報だ。
◆人間は、この進化させた「想像力」によって、あれこれ思い悩んだり、過去を後悔したり、未来を絶望したりもすることになる。ここが、チンパンジーと大きく異なるところだ。しかし、歴史が証明するように、絶望が原動力となり、困難を乗り越え発展してきたのも人間である。

人間の想像力・思考力がビンチ

◆「この人間の想像力・思考力がビンチにある」と東京医科歯科大学の藤田紘一郎先生は著書(女きバカ、男はもっとバカ)で警告している。人類を進化させてきた「想像力・思考力」が麻痺し始めていると。
◆藤田紘一郎先生は、その理由として情報過多が意思決定を邪魔する二つの理由(ウィスコンシン大学ジョアンナ・キャンター教授を紹介している。
◆一つ目の理由は、人間は、あまり多くの情報を見ていると無意識下で思考をやめ、決定意思も丸投げしてしまうのだという。つまり、「考えることをやめる」ということ。そして、二つ目は、余分な情報を削除しないと、無意識下での思考を熟成できないという。それは、「深く考えられなくなる」ということ。思考や判断を助ける情報が、次から次へと溢れかえっている状態が原因で「想像力・思考力」を低下させているのだと。

心の麻痺

◆「想像力・思考力」とは、私は「心」でもあると思っている。この便利な情報社会が「心」を蝕んでいるということであれば、意図的に情報を遮断するような時間と場所を作ることだ。そうしないとチンパンジーにはない「想像力・思考力」「心」が「麻痺」していくだけだ。
◆今、我々が抱えている「こころ」の問題は実はここに起因しているのではないかと思っている。

 

今日も深呼吸と合掌とオンニコニコで

◆深呼吸で「心のデトックス」。一度息を全て「大地に」吐き出します。次に胸を広げて鼻から息をたっぷり入れます。最後は「吐く息は細く長く」です。呼吸をコントロールし、呼吸に集中。自分の心にアプローチ。

◆「自分の根っこ」に感謝。ここに自分があること。お父様、お母様。あなたの隣にいる人とそのご縁。これから出会う新しいご縁。全てに合掌しましょう。

◆いつもニコニコ怒りません。「オンニコニコハラタテマイゾヤソワカ」は、自分もまわりも明るく・仲良く・イキイキと導くおまじない。「オンニコニコハラタテマイゾヤソワカ」。

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