鉄拳さんのパラパラ漫画「振り子」は亡くなっても愛する妻の側にいる男の話だ。

振り子ブログ
振り子

世界に通じる「振り子」

「いると思って話をすれば」

◆以前POSTした「空との対話」では、「いると思って話をすれば」先に死んだ妻とも母とも天気でさえも、よき友人になれるのだ。心を開き、孤独とはオサラバだという孤独な男の見えないものとの対話を紹介した。今日のPOSTは実際に、亡くなったのだが愛する妻の側にいる男の話だ。パラパラ漫画の「振り子」(2012)という作品だ。

二人の人生と振り子

◆女子高生が不良に絡まれていているのを、不良で堅物の男子高校生が助けるところから物語は始まる。はじめに女子高生が好きになり、やがて結ばれ、結婚、出産。お金は無い2人。奥さんはただ笑って結婚式は要らないと微笑む。

◆振り子の中に、二人の人生の出来事が映し出されるのだが、この二人の人生は、男が工場を閉めるあたりから、挫折と苦労と貧乏がつきまとう。思い通りにいかない人生だ。

◆荒れる夫。妻が倒れ、改心して…。しかし、男は妻を幸せにできずに亡くなる。死しても男は願う。妻が長く生きること。娘と妻との幸せを祈るのだ。しかし、振り子は止まらない。妻の死に向かって動き出す。懸命に振り子を止めようとする男。そうはいかない。

◆この物語の中で重要なのは振り子が止まるシーンだ。その時、一人の人生が終わっている。二度目に妻の振り子が止まる時に、二人の人生が再び動き出す。昇華というのであろうか。成仏というのであろうか。そこの場面が山場である。

目に見えないものを「お陰さま」

◆さて最後の場面で懸命に振り子の動きを止めようとしていた男の姿は、目には見えないけれども確かにある。だから、みんなこの物語を観て泣いたのだ。目に見えないものを「お陰さま」という。

◆「陰」とは、霊を表す言葉であり、即ち「お陰さま」という言葉は、自分の力だけではなく、それ以上に、お守り頂いていることに対する感謝の意味が込められている。音が見えないように、香りか見えないように。目に見えなくても存在しているのだ。金子みすゞさんの「昼間の星」のように。だから、日常の生活の中で、私は、亡き母を感じ、父を感じる。それだけではない。小学4年まで育ててくれた曽祖母を感じる。

◆見えるものだけを信じて、見えないものは、そんなものはあるはないと思っている人はこの作品はどう思っただろうか。しかし、それでも、涙は出たと思う。涙で心を洗う。心の洗濯ができたはずだ。

◆物語の方は是非youtube(鉄拳 振り子)にUPされているので、是非見てほしい。一度ご覧になった方でももう一度どうぞ。この物語はたったの4分30秒。作者は、奇妙ないで立ちでびっくりの鉄拳さん。彼のパラパラ漫画には白黒でセリフもなく、絵と音楽だけなのだが、言葉がなくても世界中のだれもが理解できる共通のテーマを扱っている。

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