輪橋山徒然話 2023 12-16.
次の文は正しいか?
「なし崩しに負担額を増やす」
「いじめをバレないと思ってやったあいつは確信犯だ」
◆「なし崩し」は「済し崩し」と書くそうだ。
◆最近までは「無し崩し」と「無」を使うとばかり思っていた。だから、「借金をなし崩しに…」とは結局借金を払うことはないことだと…。つまり、うやむやにして、義務を果たさないことだと思っていた。
◆しかし、「なし」とは、「済し崩す」と書くのが正しいそうだ。「済す」の意味は、物事を少しずつ済ませていくこと「借金を済し崩しに返す」「済し崩しに負担額を増やす」といった意味、あるいは義務を果たすという意味になる。
◆つまり、借金を「無」にすることではなく、少しずつ返済していくの「済し」なのだ。だから、うやむやにしてごまかしていくことではないし、もちろん悪い意味で使う言葉ではないのだ。
◆ちなみに類義語辞典では「小刻み」「小出し」「ずるずる」「じわじわ」「じりじり」という言葉の類語になる。
◆さて、文化庁の国語に関する世論調査によれば、「少しずつ返す」の正しい意味だと回答したのは、どの年代でも20%前後にとどまった。反対に「なかったことにする」は65.6%、半分以上が誤りなのである。ただし、国語辞典では本来の意味が最初に記述され、「なかったことにする」も併記されていることが多いそうだ。
◆会社に入ってきた新人が「やるべき仕事をなし崩しにやろうと思います。」と挨拶できたらハナマルなのである。しかし、実際その言葉を聞いたらどんな反応になるだろう。
◆「なし崩し」のように、本来の意味と全く違う「逆」の意味で使われる言葉は他にもある。代表的なのは、「確信犯」だ。
◆「確信犯」の本来の意味は、「政治的・宗教的等の信念に基づいて正しいと信じてなされる行為や犯罪・その行為を行う人」という意味なのだ。つまり「正しいと信じて」の行為だ。
◆しかし、一般的にはトラブルなどをひきおこす結果になるとわかっていて、何事かを行なうというネガティブな意味になっている。そう、「確信犯」とは迷惑がかかるとわかっていても、「正しいと信じて」やることなのである。
◆「いじめをバレないと思ってやったあいつは、いつも確信犯だ」という使い方は誤りなのである。
「故意犯」というのが正しいそうだ。つまり、地球のために、怪獣へのなし崩しの攻撃をするヒーローは、「確信犯」だ。正義の味方なのだ。
日本語はなんと難しい言葉だ。
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