輪橋山徒然話 2023/11/26 複眼的思考と単眼的思考
◆世界史の教科書にでも載るような「歴史の転換点ではないのか!!」と思われるような事件が起き、いとも簡単に人命が奪われる様が報道されている。
◆それにしても非常にショックなのは、一旦、国と国の対立が深まり、戦いになるとそれを止める手立てはないことが暴露されたことだ。強国が間に入っても対立は治まらない。そして、争いが突き詰めれば互いを受け入れないリーダー同士の対立なのだ。
◆さて、複眼ということばがある。これはトンボに代表される昆虫の眼だ。その眼で考えることを「複眼的な思考」という。つまり、広い範囲を見渡して客観的に、そして、多角的な視点から物事を捉える方法だ。
◆これに対して「単眼的な思考」とは、一つのことを深く考えていくよさがある一方で、他を簡単に受け入れない狭さを作り出すことがある。対立や分断を生む危険性がある。
◆SNSの世界は「単眼的な見方」になりやすい環境を自動的につくりだす。知らないうちに好みの情報や商品が提示さる設計になっている。これが商品だけなら問題ないのだが、強固な「ステレオタイプ」も作り出す原因にもなっている。
◆「ステレオタイプ」とは、特定のグループや事象に対する固定化された一般的な観念や先入観のことだ。SNSでは、特定の話題や人物に関する狭い視点が強調され、他の視点が抑圧されることがある。特に限られた字数で発信する場合は、より感情的、あるいは扇動的な文章になりやすい。
◆一つのことを突き詰め、深めていく「単眼的な思考」だけではなく、異なる文化的背景や価値観をも柔軟に取り入れる「複眼的思考」を育てなければならない。実はこの「複眼的思考」は黙っていては身につかない思考法だ。
◆認知神経学者の中野信子さんも「知能の高さは、一つの物事に対して複数の見方ができるかで決まる」という。知能とはものごとを処理する速さだけではないというのだ。確かに、処理能力はAIに任せればよいというのが今、これからくる時代だ。
◆たとえば、学生が気候変動についてのレポートを書く際、AIは科学的研究、政策文書、社会的影響に関するデータを提供する。この情報から、学生は気候変動の複雑な原因と影響を理解し、異なる立場からの意見を比較検討する。しかし、最終的な論文の立場や提案は、学生自身の思考によって形成される。AIは情報の幅を広げるが、深い分析と結論は人間の判断に委ねられる。このように、AIを活用することで、より広範な視野と深い洞察を得ることができる。
◆そのためにはどのようなアプローチをしていけばよいだろう。一つ鍵になるのは「批判的思考」だ。「批判的」と聞くとマイナスに聞こえるがそうではなく、「本当に正しいか?」「よりよい考えはないか?」と結果を鵜呑みにしない、自分なりに分析し最適解を求めるのが「批判的な思考」なのだ。
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