聞いて欲しい話が本気で聞いてもらえず、話が成仏していないから、年寄りは同じ話を繰り返すのだ。

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2023/10/13 「相手の話を成仏させてあげる」

◆頭木弘樹さんは20歳のときに難病にかかり、13年間の闘病生活を送る。まさに「どん底」。その入院中の状況で人の話を聞くことの魅力に気付いたそうだ。

◆今朝は、頭木さんの『人の話を本気で聞いたことがありますか?』という話から、話の成仏。なぜ年寄りの話は長くてくどいのか。

◆頭木さんは都内の病院から沖縄の宮古島に転院したときの話がある。▶️は引用

▶️年寄りが看護師さんに何か話しかけると、看護師さんは立ち止まって聞くのではなく、そばに腰を下ろして、「さあ、じっくり聞きますよ」という態度で聞く。

廊下でも病室でも。

それがどうしたと思うかもしれないが、そんな姿は東京で入院しているときには見たことがない。

-略

次にしなければならないことがつねにあって時間に追われている感じだ。無駄話に使えるような時間的な余裕はないはずだ。

なのに、腰をおろす。

そんな「じっくり聞きますよ」という態度をとってしまったら、ただでさえ長いお年寄りの話が、ますます長くなってしまうのではないか。

しかし、そういう話を聞く看護師さんの態度に、あせっている様子はない。今にも動き出しそうな感じではなく、ちゃんと腰をすえて、落ち着いている。

-略

心配はいらなかった。宮古島のお年寄りは話がくどくないのだ。

◆いつでも、じっくりと聞いてもらえる安心感が宮古島のお年寄にはあることに気がついたという。そういえば、学校でもそうだなぁと思った。話を聞くということは相手にどのぐらい関心を持っているか相手に伝わってしまうのだ。これを知っている教師と知らない教師では学級経営が雲泥の差だ。結局大人も子どもも自分に関心を持ってもらいたいのだ。

◆さて、私たちは常々年寄りの話は長く、時には同じお話もあったりして、忙しい時は遮ったり、「はいはい」という感じで聞き流したりする。頭木さんは、「若くたって、話をちゃんと聞いてもらえない人は、話がくどいものだ」という。くどくなると、ますます聞いてもらえなくなる。すると、もっとくどくなり、それで…。まさに悪循環だ。そして、年寄りの話はくどくて長いという偏見まで生まれてしまった。

◆しかし、人には聞いてもらいたい話があるのだ。例えば、自分の人生を聞いてもらいたいから話をする。自分に関心を持って欲しいから話をする。「聞いてもらいたいのに聞いてもらえない話」だから何度も話すのだ。

◆頭木さんは、この悪循環、何度も、何度もくり返し話す状態を「話が成仏」していないのだという。

◆そもそも成仏とは、現世に未練を残さず仏になるという意味だ。つまり、煩悩を断ち苦から解放されることだ。成仏できない魂は彷徨い続けることをいう。本気て弔う人がいなければ迷ってしまう。話も同様なのである。本気で聞いてあげる人がいない話が「聞いてもらいたいのに聞いてもらえない話」となってしまうのだ。

参考 音声教養メディアVOOX 『人の話を本気で聞いたことがありますか?』

頭木弘樹
文学学紹介者。『絶望名人カフカの人生論』新潮文庫『絶望名人カフカ×希望名人ゲーテ』草思社文庫『絶望読書』河出文庫『食べることと出すこと』医学書院『うんこ文学』ちくま文庫『自分疲れ』創元社。NHKラジオ深夜便「絶望名言」出演中。

 

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