輪橋山徒然話 「男はつらいよ 寅次郎忘れな草」 2023/9/27
◆アメリカでは「祖父母の日」といったイベントで、「忘れな草」をプレゼントするのが定番となっているそうだ。この花は、日本でも徐々に敬老の日のプレゼントに選ばれる植物の候補の一つだとか。
◆漢字で書くと「勿忘」。わすれることなかれ、忘れるなと読むのだろうか。ひとつひとつの花は米粒サイズの小さなブルーやピンクの花が4月~6月に見頃となる。
◆花言葉は「真実の愛」「誠の愛」「私を忘れないで」だが、何より別れを予想させる悲恋の「花」だ。
◆「男はつらいよ 寅次郎な忘れな草」はシリーズ11作目だ。ヒロインは浅丘ルリ子さん。昭和48年の作だから、50年以上前の作品だ。
◆旅回りの歌手リリーと北海道網走で出逢う。
◆リリーと寅次郎は似たもの同士だ。リリーもまた中学で家出し、旅から旅への人生なのだ。寅次郎に言わせれば「ちょっとした俺」なのだ。この二人が心を寄せ合い、意気投合する北海道の夏、釧路湿原の大自然が二人を包む。ちょっと弱気なところを見せるリリーがいい。
商売がうまくいかず、海をぼんやり眺めている寅次郎。
近付いてきた見知らぬ女(リリー)がいう。
「兄さん、ちっとも売れないじゃないか(笑)」。
寅次郎が見上げると、女が笑っている。
すごい美人だが、素人の女ではなさそうだ。
「ねえさん、ゆうべ泣いていたね」と寅次郎が静かに返す。
「兄さん、見てたのかい」とリリー。
海を眺める寅次郎とリリー。
「おれたちってよお。あってもなくってもいい、アブクみてえなもんだよな」
という言葉に、リリーはうなづく。
◆東京柴又で二人は再会し、リリーの「私の初恋の人は寅さん」のセリフとともに、期待を抱かされるが、結局リリーは善良そうな寿司屋さんに嫁いで、あっけなく終わってしまう。
◆リリーは旅をやめてしまうのだ。(リリーは15作「寅次郎相合傘」で再登場)
◆このあと、シリーズの中でも名場面とされる「さくら」とのほろ苦い別れがある。
さくらは上野に寅次郎を送る。
兄の財布に500円札が一枚しかないことに気がついたさくらは、手持ちの札を入れてやる。そして、「もっと持ってくればよかった」とつぶやくのだ。
◆このような話を人と人が織りなす「人間模様」というのだろう。そう言えば最近聞かなくなったことばの一つだ。
◆さて、「寅さん」ではなく「寅次郎」としているところに気がつかれたろうか。その理由は今回の「寅さん」は、なかなかの男前でかっこいいのだ。
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