輪橋山徒然話 2023/12/2「叱るのは不正解2 アドリブ力」
◆問題
あなたは中学校の教師です。
朝学校の見回りをしていたらある男子生徒が、教室内に水をまいていました。
そんな時あなたはどうしますか。
もちろん、「何をやってるんだ」と叱るのは不正解だ。
◆さて昨日の続きだ。実際にこのような場面に出会した教え子の実践が紹介されていた。
◆大学での学びの通り、教え子の教師は「おはよう」「おはようございます」の挨拶をかわした。そのあとでお互いに落ち着いたところで、教師は「どうしたの?」と問う。
◆
◆なんと、彼は「教室でキノコを作ろうと思っているんです」と答えたそうだ。たぶん、生徒が本当にきのこをはやそうとしているわけではもちろんないだろう。
◆この答えに対して「バカなこと」とか「まさか」とか「何を言っているの」ではなく、教え子の若手教師は「きのこ?あそうだったんだ」と相手の話を一旦受け止めたのだ。「キノコ」といわれてバカにするなと教師は怒るのが普通だ。なぜならあまりにもバカバカしく、挑発にも聞こえるからだ。
◆そして、挑発にはユーモアで切り返す「キノコを作って喜ぶのはスーパーマリオくらいじゃないかな」と。そして「諭す」。「きのこを作るのはいいんだけど、教室で作るものじゃなくて山で作るものだからさ、とりあえずきれいにしようか」だ。このあと2人は掃除をしたそうだ。
◆「とりあえず」掃除が絶妙だ。これは「とりあえず、ビール」と同じで、前向きの発言だ。教師も生徒も「とりあえず」一緒の行動をする魔法のことばの一つだ。いいとか、わるいとかではなく取りあえず、どうしようか。そう、片付けだ。
◆そこにクラスの生徒たちが登校してくる。「おはよう。やあみんな見てよ。教室がきれいだろ。彼が朝から掃除していたんだよ」と彼のしたことをいいことに転化してみんなに伝えた。
◆昨日この問題のねらいは、最悪の状況に至らないこと。この場面では「水を撒く生徒」が自らが理解されないことに憤ること、クラスの厄介者、悪者になること、いじめやからかいの対象になることなどが考えられる。
◆これを乗り越えたのが、若手教師の「アドリブ力」だと齋藤先生はいう。瞬間、刹那の対応力だ。つまり「アドリブ」とは、ただ条件反射的な一言ではなく、状況を読み、そこにふさわしい一言なのだ。
◆「今、どうする」を考えながら「で、次、どうする」と二つのことを同時に思考することでより的確な「アドリブ」を生み出すことができると齋藤先生。その基盤になるのが、「人間力」だ。「人間力」とは、状況を判断する(知)人に対する誠実さ・やさしさ(仁)、素早い行動力(勇)、孔子の「知仁勇」だ。人間力が「想定外」のことにも的確に対応する「アドリブ」を生み出すのだ。これはAIにはまだまだ不足な能力だ。
※2019 kadokawa AI時代対応 大人の知的習慣 齋藤孝 著 -複合力こそが究極の効率化である- より
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